第1回「糖尿病は、いろいろな病気の集まりです」

     一般的に糖尿病といわれると血糖値が上昇した状態を考えますが、その原因は一つではありません。太っている方をご覧になると食べ過ぎや運動不足で糖尿病になったと誰もが理解しやすいかもしれませんが、やせている方がまさか糖尿病になるとは夢にも思っていらっしゃらなかったのではないでしょうか?血糖値が上昇する原因は、血液中のブドウ糖を細胞の中へ取り込ませる作用を有する膵臓由来のホルモンであるインスリンの作用が足りないことにより生じます。インスリンの作用が足りないということには、二つの意味があります。インスリンを分泌させる膵臓からその分泌量が減少する場合と、膵臓からは充分インスリンが分泌されているのですが、分泌されたインスリンが細胞で作用を出しにくくなる病態(インスリン感受性の低下とか、インスリン抵抗性状態と呼びます)が生じている場合があります。実際には、このような二つの因子が複雑に絡み合ってインスリンの作用が十分発揮されなくなります。体の中でそのような状態が長く続くようになると糖尿病状態になります。その原因により、糖尿病をわかりやすく分類しましたのが、日本糖尿病学会が作成している病型分類です。一般的に成人に認められますのは、2.の2型糖尿病ということになりますが、病気の発症前後ではやせている方ではインスリン分泌の低下が主体、肥満者ではインスリン抵抗性が主体と考えられます。また2型糖尿病と思われていても詳しく調べてみると他に原因のある糖尿病であったということは、ときどき経験されます。現在、糖尿病に対する種々の薬物が使用出来る時代となりましたので、一概に糖尿病と言いましてもこのような個々人の病気の特徴・原因をよく考えた上での薬剤選択が重要と言えますので、あなたの糖尿病の正確なタイプの確認が重要となるわけです。

    (文責:前橋広瀬川クリニック 糖尿病外来担当 清水弘行)

 

糖尿病の病型分類(日本糖尿病学会 2010)

  1. 1型(膵b 細胞破壊によるもの)
    a. 免疫性、b. 特発性   劇症、急性、緩徐進行性

     
  2. 2型(インスリン分泌低下と抵抗性によるもの)
     
  3. その他の糖尿病
    a. 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
    1) 膵 b 細胞機能にかかわる遺伝子異常
    2) インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常
    b. 他の疾患、条件に伴うもの
    1) 膵外分泌疾患、2) 内分泌疾患、3) 肝疾患、
    4) 感染症、5) 薬剤や化学物質によるもの、
    6) 免疫機序による稀な病態、
    7) その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことが多いもの

     
  4. 妊娠糖尿病(明らかに糖尿病と診断されるものは除外)